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妄想シンドローム
第7章 意外な正体




 春馬が出て行ったのを遼子はなぜか確認しに行き、そして再び冷蔵庫を開けるとビールを片手に戻ってきた。


 元の位置に座った彼女はおもむろにプルタブを押し上げ、炭酸が抜ける音を立てて開封されたビールを口へと流し込む。


「遼子さん、それ……」


「ん? ビールだよ」


「解りますけど! ないから春馬に買いに行かせたんじゃ」


「杏璃ちゃんも鈍いねぇ。ちょっとばかり女同士の話したいから追い払ったに決まってんじゃん」


 なるほど、そういうことか。


 何も知らずに買いに行かされた春馬が少し可哀相に思いつつ、遼子は何を話したがっているのかと身構える。


「杏璃ちゃん」


「は、はい」


 緊張で声が裏返ってしまう。


 遼子はテーブルに腕を乗せ、身を乗り出した。


「今現在、彼氏はいないのよね?」


「そうですね」


「ぶっちゃけ、優希とどうなのよ? その年齢でただつるんでるってわけじゃないでしょ?」


「へ?」


「だーかーらぁ。優希とちょっとはいい感じになってたりしないの?」


 春馬といい感じ? つまりあれか。恋愛関係にあるかどうか聞きたいのか。


「いや、ないです、ない! これっぽっちもないです!」


 両手を振って大袈裟なまでに否定すると、遼子は「なぁんだ」とがっかりする。





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