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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
「春馬と連絡をしょっちゅう取りだしたの、最近ですし」
「そうなの? ずっと続いてたかと思ってた」
「高1で元カレと付き合い始めちゃったんで。だから高校時代は疎遠になってたんです」
「例の彼ねー。そうだ、ごめんね。あたしが新作出したせいで、杏璃ちゃんに辛い思いさせたんだってね」
遼子はグビグビと呑んでいたビールの缶をテーブルに置き、崩していた脚を正座に組み直して、心底申し訳なさそうに頭を下げる。
杏璃は「とんでもない!」と慌てて遼子に弁明する。
「きっかけは遼子さんの新作だったけど、あの男の性根が腐ってるの見抜けなかった私がいけないの。甘い笑顔と言葉に騙された私がバカだった」
「優希からちらっと聞いたけどさ。ほんっとしょーもない男らしいね」
「しょうもないどころの騒ぎじゃないですよー」
「あたしが昔の仲間連れて、根性叩きなおしにいってあげようか?」
「え……」
「みんな現役退いたって言っても、武闘派揃いだから。あたしの可愛い妹分が酷い目遭わされたって言えば、速攻集まってくれるよ」
本気とも冗談とも取れない遼子の申し出を、杏璃は小動物のように震えながら丁重にお断りをいれた。
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