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妄想シンドローム
第7章 意外な正体
春馬は重たそうな袋をテーブルにどさりと置き、杏璃の隣へ腰を下ろす。
杏璃はけして春馬と目を合わさないように、彼とは反対に顔を向けたまま。目を合わせたらきっと石になってしまう。
「……そんなことより、それはなんだ?」
「ビールよ、ビール。見りゃわかんでしょ。あんたが彼女とか生意気ー。んでどんな子?」
本当は冷蔵庫にビールがあったのを遼子は隠すつもりはなく、悪びれる態度も見せない彼女の興味は、春馬の過去の彼女一点だ。
だが一向に春馬は口を割ろうとせず、彼の態度に遼子はぶすくれてから杏璃ににんまりと笑いかけた。
嫌な予感がした。それはすぐさま現実となる。
「ねぇ杏璃ちゃん? 杏璃ちゃんはこいつの彼女、どんな子だったか知ってる~?」
猫なで声の質問。柔らかさとは裏腹に、杏璃は教えてくれるよな、という威圧感があった。
隣からは言うなよという無言の圧力が、毛穴の奥深くまで突き刺さってくる。
姉の威圧感に服従するか、弟の圧力に屈するか。
非常に迷うところではあるが、どちらにせよ痛い目を見るのは明白。ならばまだ耐性のある弟を切り捨てようと腹を括った。
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