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妄想シンドローム
第8章 二人きりの夜
プロの作家に相談するのは今さらながらに気が引ける。だが気兼ねなく何でも聞いてという遼子の善意をありがたく頂戴した。
『猫彼女の観察日記』の大まかなあらすじをまず伝え、設定が活かされていないために既出の流れを変えるべきかを訊ねた。
「そうねぇ。ひとつ言えるのは、活かされない設定は邪魔になるだけってことかしら。無駄な描写が増えるし、展開が行き詰るのは目に見えてるし。あたしも当初のプロット通りに進まないことなんてしょっちゅうよ」
「遼子さんでも?」
「あたしだけじゃなく、物書きなら大抵の人は経験してると思うわ。キャラが親の思い通りに動いてくれなくて、勝手気ままに行動していって、ほんと困る」
「キャラが勝手に……。でも書いてるのは遼子さんですよね。思い通りに動かないなんてあるの?」
「あるわよ~。ドSキャラで設定していたはずが、蓋を開けたら激甘なワンコキャラになってたり。で、キャラの性格が変わると物語も想定とまったく違ってきたりしてね」
杏璃にはまだ想像もつかない領域だ。
総一はこうでルルはこうだと決めてかかり、行きつきたい到着点へ向けて書き進めるのが手一杯。
遼子はそれでは駄目だと言う。
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