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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉



「さっき、あれだけ意気込んでみせただろう!? 書くって言ったよな? 今日一日で何回気が変わればいいんだ!? 秋の空か!?」


「だってぇ、官能小説がどんなのか知らなかったんだもん」


 ベッドで寝転んで読んでいた杏璃は起き上がって、クッションを引き寄せて腕に抱える。


「それにさ。書くのはいいとしてもよ? そこから先は? 自費出版? 私が書きましたってその本あいつに渡すの?」


 書くだけなら誰にだってやれる。パソコンかワープロか、もしくはスマホで文字を打てばいいだけだ。


 そう考えている時点で、杏璃の考えは甘いと言わざるを得ないが。


 ともかく、杏璃が心配しているのはその先だ。自費出版するにせよ、費用はいくらくらいかかるのか。学生の自分に賄えるのか。


 上手いこと書籍になっとしても、その本をどう司に渡せばいい? 自分が書いたと言って渡す? 卑猥な文字が綴られている本を?


 ズタズタに引き裂かれた杏璃の乙女心を思えば、恥くらいは隠忍の範疇だ。しかしあの男が杏璃が書いた本を受け取るのか? 受け取ったとしても読もうという気を起こしてくれるのだろうか。


 様々な疑問と不安が渦巻き、春馬が提案した作戦を変更したほうが良さそうだと逆提案したのである。





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