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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉




 だが春馬は頑なだった。


「それについては俺に考えがある。今すぐに提示してやりたいが、安易なことは言いたくない。お前は余計なことは考えず、読書に集中してろ」


「そりゃ春馬は頭いいし、得策あってのことだって信じたいけど。でも私、エッチな小説もだけど、小説自体書いたことないのに、上手くいくのかなぁ」


「またその話に戻るのか。まぁいい。それについても俺がサポートする。何も一人でやれとは言ってない。乗りかかった船だ。最後まで付き合うつもりだから」


「春馬が?」


「ああ。それと、物書きにとって最も重視される才覚がお前には備わってる」


「私に? 春馬が褒めるとか気持ち悪いんだけど」


 悪い予兆を感じているかのように、杏璃はブルリと震える。


 それを見た春馬がゆっくりと杏璃へ拳を掲げるものだから、慌てて彼女は「ごめん、ごめん」と悲痛な声を出す。


 苛立ちの色を出す嘆息を春馬は吐き、鋭い視線で杏璃を見据える。杏璃の喉が上下した。


「お前、妄想、得意だよな」


 一言ずつ丁寧に、なおかつ重々しさを醸し出して問いかけられて。


「……へ?」


 と間の抜けた声しか杏璃からは漏れなかった。





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