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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
「もう、もうっ! 恥ずかしがらなくていいのにぃ」
由菜は杏璃の腕を人差し指でグリグリと掘り、耳元に顔を寄せてきた。
杏璃は何事かと由菜の囁きに集中する。
「ついに結ばれた……当たりでしょ!?」
「へ……?」
「キャー! やっぱり!」
肯定をしていないのにも拘わらず、由菜は勝手に盛り上がる。由菜が跳ねると、彼女の髪の軽く巻いてある毛先も一緒に跳ねた。
「ち、違うって!」
「いいの、いいの。解ってるから。二人とも奥手で初心だものね~。あの日の翌日って照れちゃうわよね」
「由菜ちゃん、ホントに違うから! 私たちはその……」
理由は言えないにしても、別れたことくらいは伝えるべきか。でないと別の厄介事が増えそうだ。
どの道、行動を共にしないところを目撃され続ければ、別れたことはすぐに広まるだろう。
そのことを口にするのは、傷が癒えていない杏璃にとって辛いものだが、長嘆のあとに口を開く。
「あのね、由菜ちゃん。私と司は」
「杏璃、おはよう」
真後ろからあの男の声がしたかと思えば、横に来た彼に肩まで抱かれ、驚愕で見開いた瞳で見上げた。
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