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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
「つか……!?」
「昨日は看病ありがとね」
司がにこりと笑うだけで、周囲から黄色い歓声が起こる。杏璃はこの笑顔が偽物だともう知ってしまっているため、この場でただ一人寒気が起こったが。
「司くん、おはよう。看病って昨日風邪でも引いてたの?」
「由菜ちゃん、ちが――ッ!?」
「そうなんだよ。そしたら杏璃がわざわざ来てくれて。素敵な彼女持った僕って、本当にラッキー」
否定しようとすると、肩を抱く司の手に力が込められ、痛いくらいに掴まれる。余計なことは言うな、と無言で脅してきているのだ。
「キャー! 私もそんなこと言ってくれる彼氏欲しいっ!!」
杏璃が痛みに耐えているとも知らず、由菜は純粋に羨ましがっているようだった。
「由菜ちゃんならすぐできるって」
「そうかなぁ?」
「うん。あ、ごめん。ちょっと杏璃借りるね」
「どーぞ、どーぞ! 借りてたの私だし!」
「じゃ、行こうか杏璃」
口許に微笑を浮かべ、目元はまったく笑っていない司に、杏璃は戦慄を覚えた。
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