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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉
さて、状況を整理しようとばかりに、春馬は中指で眼鏡を押し上げた。
「まず、何をどうこうよりも、こんな場所でお前に泣かれる俺の体裁を、どう捉える?」
どうやら春馬は見た目に反せず、酷薄なようだ。
嘘泣きでもなければ、大袈裟に泣き散らかしているわけでもない杏璃に、慰めの言葉をかけもせず、第一に自分の体裁を考えるとは。
しかし春馬の置かれる環境を冷静に考えれば、それも頷ける話だ。
まぁ、杏璃にその冷静さがあれば、そもそも“こんな場所”に呼び出してはいないだろうが。
杏璃はすでに散々泣き腫らして、普段の半分ほどしか開かない濡れた瞳を周囲に向けるものの、何を非難されているのか解らず、首を捻る。
「どう……って?」
「正気か!? こんなピンクでファンシーで、頭がお花畑の女の巣窟のようなカフェで! ああ、そうか。そうだったな! お前もそのお花畑の一員だったな! 理解を求めた俺が馬鹿だった!」
頭がお花畑と揶揄された客たちから、一斉に強い非難の視線を浴びせられるが、とうにそれらに浸りきっているのだ。今さら増えたところで痛くも痒くもないらしい春馬は、杏璃を糾弾するのに徹した。
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