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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
「そう、取引き。何、杏璃にとってもいい話だと思うけど?」
「それよりもまず! 私に言うべきことがあるんじゃないの!?」
「んー? 言ってる意味がよく解らないなぁ。もしかして僕に……謝罪を求めてるの?」
「と、当然でしょ! それだけのことしたの、自覚ないの!?」
一言……せめて一言。ごめんと言ってくれさえすれば、いくばくかは胸が晴れる。
踏みにじられた彼への気持ちと、失った時間は戻らないにせよ、一途に想ってきた自分に見せられる、彼の唯一の誠意なんじゃないのか。
けれど司の表情は、杏璃に謝罪する気持ちなどさらさらないと告げていた。
「僕は杏璃に何を謝ればいいの? 好きでもないのに付き合ってたこと? その気もないのに、結婚をにおわせてたこと?」
「全部に決まってるじゃない!」
「ふぅん。でもさぁ、杏璃だって偽ってたよね?」
「は……?」
「そ・れ。その口調。昨日までと全然違うの、気付いてないの?」
司に指摘されてハッとなる。
杏璃は下唇を噛んで、俯いた。
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