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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
「あはは! 杏璃だっていい思いしたじゃないか! 僕を非難する権利あるの?」
涙を零すまいとする瞳で司を睨む。
「僕のような男と付き合って、友達から羨まれたでしょ? 浴びせられる羨望は気持ち良かったんじゃない? 一時でも幸せな夢を見られて、舞い上がったんじゃない? そのことも自慢して回ったでしょ? 杏璃も僕を利用してた。僕が杏璃にしたことと、何の違いがあるの?」
杏璃の心が悲鳴を上げる。
最低の男と付き合っていたのが悲しいのではない。それよりもそんな風に思われていたのが悲しくて仕方ないのだ。
そりゃあ羨ましがられて、嫌な気分にはならなかった。彼が自分を大切に扱ってくれることを嬉々として話しもした。
だがそんなものだけで司と一緒にいたと思われるのは、心外だった。
「もう……いい」
いくら話し合っても理解し合えない人がこの世にはいる。ただそれだけだと、杏璃には割り切るしか道はない気がした。
杏璃は恨みつらみを飲み込み、教室を出ていこうとすると、待ったの声がかかった。
「本題はまだだよ」
「もう話すことないから」
決然と言い、背を向けたまま歩むのを止めないでいると。
「大学生活の残り三年半。杏璃は独りぼっちで過ごしてもいいんだ?」
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