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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
脅し文句に足が止まり、つい振り返る。
「女子って怖いよねー。イケメン正義で、そのイケメンをこっぴどーく振った、って言えばどうなるかなぁ?」
「なっ!?」
「女子の情報網って蜘蛛の巣みたいに張り巡らされてるし? 僕がちょっと洩らしちゃえば、すぐ広まって居場所なんてなくなるだろうね」
杏璃は昔のことを思い出し、ブルッと震える。瞳孔は開ききり、恐怖に屈しかけていた。
「でね。杏璃が恋人のフリしてくれれば、僕の口は瞬く間に固くなるよ? ほら僕さ、他人にベタベタ触られるの嫌いじゃん? 恋人がいるって建て前があれば触らせないようにも出来るし。新しく恋人役作ってもいいんだけど、イチから躾けるの面倒くさいし。その点、杏璃は扱いやすくて良かったよ」
つまり杏璃には嘘の噂を流さない代わりに、女避けになる“恋人役”をこれまで通り続けろと。
誰がそんな提案に乗ってやるものか。そう反発したいのに、頭の中で巡る記憶が阻んでいた。
「んじゃ、そういうことで! もし杏璃がおかしなことしたら、僕のお口チャック開いちゃうからよろしくね」
小首を傾げる司。
杏璃に選択肢は与えられなかった。
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