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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動



 ――それは杏璃が小学生低学年の時のことだ。


 その頃の杏璃は天真爛漫で、なおかつ思ったことをすぐ口にする性格であった。


 明るくてリーダー気質のあった杏璃の周りには、常に人が集〈ツド〉っていた。


 杏璃ちゃんと遊ぶのは楽しい。杏璃ちゃんには威張りくさる男の子たちも形無しだ。そう口々に言う友人に囲まれ、杏璃は日々何の憂いもなく過ごしてきた。


 しかし杏璃の生活に翳が落ち始めたのは小学五年生に上がる頃。


 幼少時にはおのおの確固たる思考、思想がなくとも、徐々に家庭や集団の中でそれらが育ち、個性が出てくる。


 杏璃が集団の中で目立てば、それを煙たがる者が出るものだ。その勢力が小さければ、杏璃に蔭を落とすことはなかったであろう。だが違った。


 杏璃だけが持ち合わせているわけでないリーダー気質を持った女子が、周囲を取り込んで杏璃を孤立させた。


 なんてことはない。端的に言えばハブというやつだ。


 杏璃ちゃんと遊ぶのはつまらない。杏璃ちゃんって人気があるからいい気になってるよね。


 そんな声が杏璃に常につき纏うようになってしまった。







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