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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
急激に変化した環境。いつまで続くか解らない孤立の状況。暴力こそ振るわれなかったものの、精神的に追い詰められるのには充分な状態だった。
低学年の時分は集団登下校の最中に真ん中で友人と笑い合っていたのが、今では最後尾に独りきりで肩を落として歩く。
なぜこうなったのか。どうして自分がこんな目に遭わねばならないのか。問いかけても己では答えは出ず、まして己以外で答えてくれる者もなかった。
唯一の居場所は自宅のみ。両親は共働きで忙しく、そこでも独りぼっちなのには変わりないが、集団で孤立する恐怖はなく、帰宅後や休日には自宅で過ごすことが増えた。
そんな時、杏璃は妄想を膨らませた。
例えばこんな妄想。きっと自分はどこかのお姫様で、いつか王子様が迎えに来て、ここじゃないどこかへ連れて行ってくれる。
他にも色々した。
アニメの主人公は、どうしてだか不遇の環境にいることが多い。だからきっと自分もアニメの主人公のように、地球を侵略してくる異世界の生物と戦うことになるんじゃないかと。
好きな漫画のヒーローの相手役を自分に置き換えてみたりもした。漫画とは違うストーリーにはなるが、最終的にはヒーローと結ばれる。
大抵は自分を主人公にして妄想する。その時だけは嫌なことを全部忘れられた。
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