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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動
「――私はもう、独りぼっちになるのは嫌。あの時、春馬がたくさんアドバイスしてくれた通り、何でも考えなしに口にしたりしないようにして、人に合わせることも覚えて、やっとまた友達が出来たのに」
司の脅しに屈するのは、杏璃とて本意ではないなのだ。孤立するのを覚悟して、司の理不尽な取引きになど応じない。出来ればそうしたい。
しかし一度染みついた恐怖は、強力な心の漂白剤でもなければ抜けることはない。そんなものがあればの話だが。
「だからお前は馬鹿だと言われるんだ」
「どういうこと?」
「俺らはもうそんなに子供じゃない。そいつの言葉を全員が全員信じるとでも? 同じ学科、同じゼミ。大学に一体何人在籍してる? 多少悪い噂が立ったとしても、お前の味方をしてくれる奴は一人くらいいるだろ」
「春馬はあいつの影響力を知らないからそう言えるんだよ」
事実、司の影響力は凄まじいものがあった。
司がぽつりと零した一言。音楽関係だったり、または映画だったりファッションだったり。何気なく発した話題を傍で聞いてた誰かが広め、みんなしてその音楽を聞いたり、映画を観たり、恋人に服を着せたりするのだ。
当時の杏璃からしたら司を誇らしく思ったりもしたのだが、いざ自分のことになると多大なる影響力を有する司が厄介でしかなくなった。
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