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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動




「じゃあ春馬は私の専属編集者ってことか!」


 彼に読まれるのは恥ずかしい気もする。でもそれ以上に心強さを感じた。


 春馬が協力してくれるのは、調べ物までだとてっきり思っていた。しかし最後まで付き合ってくれる意思を聞き、杏璃は安堵する。


「よろしく頼むよ、相棒!」


「……ああ」


 にこやかに差し出した杏璃の手は、上から目線的発言だったのがお気に召さなかった春馬によって粉砕間近まで握られた。








◇◇◇◇


 義父が夜な夜な昌子〈マサコ〉の身体を求めに来るようになってから、どのくらい経ったろうか。


 若くして夫に先立たれ、身内もすでにいなかった昌子を、同じく妻に先立たれた義父は夫が鬼籍に入ったのちも家に住まわせてくれた。


 夫を亡くしたばかりの当初は、昌子を心身共に支える良き義父だった。まるで本物の親子のような良好な関係。


 昌子自身、早世した両親を恋しく思うことは幾度となくあり、義父に親の愛情を求めてしまっていた面があった。


 彼もまた肉親を喪い、そうした互いの寂しさを埋めるためにも、寄り添った生き方を選んだのだと思う。


 そのような関係に変化が訪れたのは、彼が珍しく酔った晩だった。








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