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妄想シンドローム
第2章 いざ、始動



 義父は妻の命日に、彼女を想って涙を流して晩酌をしていたのが始まり。


 しきりに彼は「息子を守ってやれなんで、すまんな」と涙する。昌子もまた夫を思い出し、涙を堪えて義父を宥め、酌をした。


 その際、義父から少しだけ付き合ってくれと頼まれ、あまり強くない酒を「じゃあ一杯だけ」と呑んだのがいけなかったのかもしれない。


 久々に口にした日本酒は存外に口当たりがよく、三杯ほど呑んでしまった。それだけで昌子はほろ酔いになり、心地良い酩酊が身体を火照らせた。


 胸元まできっちりと止めたシャツのボタンが息苦しく感じる。


 義父を見遣ると、酩酊しきった濡れた瞳は空中を彷徨い、半分眠りかけているように見える。


 ボタンを一つ、二つ外しても、酔っぱらっている義父には意識の外だろう。だからみっともない姿を晒しても大丈夫。


 けして正常とは言い難い思考で昌子はそう判断して、ボタンに指をかけた。


 はだけたシャツから覗くしっとりとした白い肌は、酒気で僅かに紅潮していて、色香が匂い立ちそうだ。


 ボタンを外すと呼吸が楽になり、ふぅと息を吐く。その様も艶めいている。


 そんな昌子を情欲を宿した義父の目が見つめているとも知らず、彼女は無防備にシャツを軽く摘まんで前後させ、空気を送り込んいる。


 シャツの合間からレースのシュミーズが見え隠れし、義父の欲情を煽っているとも昌子は考えもしなかった。






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