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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉



 ――今から遡ること数時間前。


 この春から大学生となった杏璃は、日課となった大好き彼――上条司〈カミジョウ ツカサ〉へとモーニングコールならぬモーニングメールを送った。


『おはよう! 今朝もいい天気だね。いつもの時間に駅で待ってるね』と。


 文面はあっさりとしているものの、恋人に送るメールならではの、キラキラしたハートマークやデコレーションをたっぷり施したものだ。


 送信を確認してから、杏璃はベッドから起き上がる。クローゼットの服を漁り、何を着ていこうか吟味した。


 並ぶのは司が好む清楚な洋服。露出が多かったり、派手なものは司が嫌がるのだ。


 だが杏璃は、服装に口出しをしてくる司に不満はない。なぜなら、杏璃自身も自分には清楚系の洋服が似合うと自負があるから。


 王道の少女漫画の主人公にぴったりな容姿、といえばわかり易いだろうか。


 どこまでも白い肌、ぱっちりとした瞳に控え目な小鼻、ぷっくりした唇。髪はいつまでも撫でていたくなるような柔らかな手触り。


 ナルシストというわけではないが、まあまあ可愛らしく産んでくれた両親には感謝したいくらいだ。


 そんな杏璃の恋人である司も、これまた正統派の所謂王子様タイプだ。






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