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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
「……大筋が決まったなら、あとは視点とそれから……」
「してん?」
「は? まさかそんなことも知らないのか?」
杏璃の頭上にハテナマークが浮かんでいるのを春馬は察したのだろう。彼は先が思いやられると呟いてから、視点とやらの説明をかいつまんでしてくれた。
『私』や『僕』など、主人公の目線で物語が進むのが一人称視点。客観的な目線で進むのが三人称視点。
他にも二人称や神視点なるものが存在するらしいが、主流は一人称と三人称とのことだ。
杏璃は説明されても何が何だかと首を捻る。
「お前が普段読んでるのが三人称だと思えばいい。あとは書いて慣れろ」
「ふぅん……。あれって三人称ってやつなんだね。で、私はどれで書けばいいの?」
「それくらい自分で決めろ。何でもかんでも人任せにするな」
「はーい」
下唇を突き出してふて腐れると、その顔が癪に障ったらしい春馬に思い切り下唇を捻りあ上げられた。
痛みに悶える杏璃に春馬は満足そうな表情をしたあと、眼鏡を中指で押し上げた。
「一つだけアドバイスをやろう。心して聞け」
春馬の真剣な口調に、杏璃は痛みに耐えて姿勢を正す。
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