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妄想シンドローム
第1章 彼女が○○を目指した理由〈ワケ〉
杏璃はすぐさま身支度を終え、司を看病すべく、近くのコンビニへと立ち寄った。
額に貼って冷やす物やら、食欲がなくとも喉を通りそうなゼリーやらスポーツドリンクやらを買い込み、司が住んでいるというアパートへと、以前聞いていた住所を頼りに向かった。
電車で数駅――自宅から三十分ほどの距離のそこへと到着し、ここへきて杏璃は司の容体もそうだが、別の意味でも不安に駆られた。
もう三年の付き合いにはなるが、今時珍しく清いお付き合いをしてきたため、住所は知っていても部屋に入ることはおろか、来たことすらなかったのだ。
『杏璃のこと大事にしたいから、結婚するまでは、清い仲でいようね』と、神々しいまでの笑みで司に告げられたのは、付き合って三ヶ月目。
大好きな人が、自分を大切に想ってくれている。もうそれだけで満たされてしまい、頬を染めて可愛く頷いた杏璃。
月日が流れるにつれ、周囲の友人たちが経験を済ませてしまうことに焦燥を感じはしたし、司にならすべてをあげても……と考えもした。
けれど女から誘う品位に欠ける行為は、司の嫌うところだと、いつか来るだろう結ばれる日を夢見て、けしてそういったことを口にはしてこなかった。
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