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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら




「それに物書きって言うけどさぁ。たかだかエロ小説じゃん。言い回しだの表現だの、そんなにこだわる必要ある?」


 身も蓋もない言い方をすれば、官能小説なんぞは自慰小説じゃないか。


 ストーリーに入り込むベースは必要かもしれないが、あとは腰を振らせておけばいい――それが杏璃の考えだった。


「お前……それ、本気で言ってんの?」


「本気も何も事実じゃない。春馬と買った本だってさぁ、ヌレヌレのエロエロばーっか! それって濡れ場さえ書いとけば、売れるってことでしょ? 猫彼女も濡れ場で大半を占めておけば、あっさり賞なんて取れちゃうんじゃない?」


 杏璃が出そうとしている公募にどれだけの応募数があるかは知らないが、ある程度の文章力とエロさえあればどうにかなるんじゃないか。


 そんな風に杏璃は気楽に構えていた。


 得意げにつらつらと語る杏璃に、春馬の低い声が届く。


「……やめた」


「え? 何って?」


「こんな奴に協力してんのが馬鹿らしくなったと言ったんだ」


 侮蔑を孕む春馬の眼差し。


 杏璃は戸惑って口許を引き攣らせる。






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