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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
…蒼汰も。
いつもより優しい顔してるね。
「早く孫の顔見せてやりてぇ〜」
「っ!?はっ、早…」
「早くねぇよ。結婚した後はピルやめとこうな」
ひぃ…
ふ、と笑い、運ばれてきたプリンをあたしの方に置く蒼汰。
「はい。一口どうぞ?」
「…へっ」
「食べたそうにしてた」
「ありがと…」
プリンの一口を、ちょっと多めにすくって貰うけど、全然怒られない。
「…おいしい!」
「そ?俺も食べる〜」
あたしの残りのパフェは結局蒼汰に食べて貰い、プリンは2人で半分ずつ食べた。
「杏奈。俺寝る」
「うん」
3大欲求を次々と満たしていく蒼汰。
新幹線で席に座った途端、あたしの肩に頭を預けて目を閉じた。
ふわっ、とあたしと同じシャンプー、香水の香りが漂い、ちょっと幸せな気分。
それからすぐ寝息をたて始めた蒼汰。
ほんとに眠かったんだ。
まあ今日7時半に起こしちゃったしなぁ…
それからずっと寝てて、あたしは蒼汰越しの窓の外の景色を眺めていた。
音楽聴きながら寝るとかあたしは出来ないなぁ。
2人で1つのミュージックプレイヤーを使い、蒼汰の好きなアーティストの曲を聴いてるあたし達。
…寝てる内に変えちゃえ。
蒼汰の手からそっと抜き取り、あたしが好きなアーティストの曲に変える。
…よし、気付いてない。
あたしも寝ようかな。
そう思って、蒼汰の頭に頭を預けようとした時。
「ここ、いいですか」
声をかけてきたのは、茶髪の若い男の人。
あたしの横の席を指さした。
「あ、どうぞ〜」
ちら、と蒼汰を見たけど、相変わらず寝てて。
あたしの隣に男の人来たら窓側代わってくれるって言ってたな。
窓側行きたいな…起こそうかな。
「…ね。蒼、」
「どこまで行くんですか?」
「?」
あたしの腕に手を置き、にこにこと尋ねてきた男の人。
「…あ、えーと」
…どこだっけ。
えっと、確か…
「金沢まで…」
「へぇ、じゃあずっと乗ってんだ?
俺が先に降りちゃうんだね」
「はぁ…」
さっきまで敬語だったのにこの人…よく分からない。