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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
何だかもう、呆れて何も言えない。
何だろう…何したいんだろう、この人。
怪訝な目で見つめてると。
「…ほら。このままだとあんずちゃんが
周りに迷惑かけてることになっちゃうよ?
ここはホテルもつけないとだよね。
俺とデートしてくれるんなら、
この騒ぎ俺が抑えてやってもいいんだよ?」
「…っ」
ぞわっ…
耳元で囁かれて、寒気、というか悪寒が走る。
ていうか…はぁ!?
うるさくしたの自分じゃん!
何であたしに責任押し付けるの!?
いや、こんなおかしな話ないでしょ…
普通の女の子ならここで焦ってこの男のデートを承諾するんだろうか。
あたしが人の頼みは断れないような女に見えたんだろうか。
悪いけどこういう時の対応なら死ぬほど慣れてるんだよね。
キレそうになるのを何とか堪えて、深呼吸し、あたしを見つめてる男の人に言った。
「…あの。本当に周りの人に迷惑なのでやめてください。
勝手に言い掛かりつけてデート誘うのもおかしいけど
もっと上手に静かに誘ったらどうですか?
そんなんじゃ誰も引っかかりませんよ」
ちなみに声結構大きめ。
「…!?」
「無視されたくらいで怒るってどういうことですか?
人の旅路の道中邪魔しないでください。
せっかく気持ちよく寝ようと思ってたのに
眠気覚めちゃったじゃないですか。最悪ですよ。
あと腕痛いんですけど。離してください」
パッと離された腕。
あぁほんとに痛かったー。
「あと、見えません?彼氏が気持ちよく寝てるんですよ、
起こさないであげてください」
「…!?」
男の人が蒼汰を見て驚いた顔をする。
…気付かなかったこの男の人も凄いけど、起きない蒼汰も凄い気が。
すると。
「…ん」
…あ。
起きた、性欲大魔王が。
あたしに寄りかかってた蒼汰は身体を起こすと、男の人を鋭く睨んだ。
「…あ?誰?何?俺の女に何か用?」
…ちょ。
怖。
怖いって、お兄さん。
「…あ、いや、あの…」
弱っ!
男の人、いきなり弱くなったけど!?
「人の女勝手に口説かないでくれる?
こいつ俺のものなんで」
ものですか、あたしは。