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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
「ここら辺来んの初めて?」
「うん。北陸は初めて」
「ようこそ石川へ」
「ふふ〜」
俺に身体を寄せてくる杏奈。
可愛い。
「あー…、あたし、蒼汰とこんな関係なれたんだぁ。
実家連れてって貰えて、結婚の挨拶。
…えへへ、嬉しい。えへへ」
「…」
あ〜〜〜
可愛い、マジで。
すぐ機嫌なおすところも、めっちゃ好き。
駅に着いて新幹線を降りると、懐かしい風景に思わず頬が緩んだ。
数年帰ってなかったから見慣れない新しい建物すげー増えてるけど、やっぱ故郷、って感じだな。
「そ、蒼汰。ここの人歩く速度遅くない?ぶつかっちゃう」
「こっちはこれが当たり前。
東京の人間は歩くのが速いんだよ」
「えぇっそうなの!?
こんなゆっくり歩いてて遅れないの!?」
「遅れない遅れない」
俺も数年前に久しぶりに帰った時同じこと思ったわ。
すっかり東京に染められたな、俺も。
「母親迎えに来てっから、駅出るぞ」
「…えっ?えっえっ何て?むっ迎え!?
ちょ、あたしの心の準備はっ!?」
「大丈夫。ヤる時みたいにすぐ順応すんだろ」
「他人事だと思って!」
「だーい丈夫大丈夫」
「あたしのおばあちゃんに会う時ガッチガチだった
蒼汰に言われたくないんだけど!」
…んん。
だって大好きな子の身内の方だからな。
そりゃガチガチになりますよ。
「でも俺の親はマジで大丈夫だから」
「自分の親だからそう言えるんだよぉぉ」
いや、ほんとに。
緊張してる方が疲れるよ、後々。
…まあ。
杏奈…親いないからな。
"親"と称される人間と接すんのは慣れてないだろうから緊張するよな。
「気に入られようとか全く考えなくていいから。
もし考えてたんならすぐその考え消し去って。
…あぁ、俺が身体で消してやろうか?」
「!?」
繋いでた手を離し、距離を取る杏奈。
俺を上目遣いで睨み上げて…可愛い。
「…何でいつもエロい風に考えるの」
「そしたら気ぃ楽になるだろ」
「意味分かんない」
戻ってきた杏奈の肩を抱き寄せながら、怪訝な顔をする杏奈を笑顔で見下ろす。
そんな顔もイイなぁ…