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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問






「ここ蒼汰の部屋!?」


「うん」


「わーっおしゃれ!」


きょろきょろと見渡し、俺を振り返る杏奈。


「彼女連れ込んでたの?」


「今連れ込んでる」


「前は?」


「…美咲はよく入ってたけど」


いろんな意味でな。


荷物を隅に置き、部屋のカーテンを開ける。


いい天気だ。


「じゃあ彼女としてはあたしが初めて?」


「ん」


「やった」


…あああ。


顔をくしゃっとさせて笑う杏奈…どうにかしてやりたい。


「物少ないね〜」


「今東京に住んでんもん」


「これ何ー?」


「部活の大会ん時の写真」


「蒼汰幼いー!」


嬉しそうに笑う杏奈に、本棚から卒業アルバムを取り出して渡す。


「…見る?」


「いいの!?やったー!」


アルバムを胸に抱いてカーペットに座った杏奈の隣に俺も座る。


「…これ美咲さん!?」


「うん」


「いやぁん可愛いー!付き合いたい!」


「バカか」


ほんとどんだけ美咲のこと好きなんだ。


「蒼汰幼いね〜」


「…、」


「あ、これ2人写ってる」


投げ出した足をパタパタさせながら食い入るように見てる杏奈の背中が曲がってる。


「おい、背中曲がったおばーちゃん。
机あんだから載せて見ろよ」


「うん〜」


にこにこしてる杏奈をしばらく見つめ、ソファーに身体を預ける。


「ねぇねぇ蒼汰、美咲さん凄いモテてたんでしょ?
美咲さん好きだったのどの人ー?」


「そこに写ってる男全員」


「…えっ!?」


「マドンナとか高嶺の花的な存在だった」


「すごーい!さすが〜」


「個人写真で美咲の右横に写ってる女いるだろ。
そいつ美咲虐めてたやつ」


「…は?何で虐めるの!?最悪じゃん!」


「モテてんのが気に食わなかったんじゃね。
美咲虐められてることに気づいてなかったけど」


「そ、そうなんだ」


「取り巻き的なの3、4人いてさ」


「1人じゃ何も出来ない人だね」


「なんか俺のこと好きだったらしい」


「…それ間違いなく蒼汰が原因だよね?」


「知らね〜」


最終的に和解してたしな、俺はそいつら振ったし。


「ねぇねぇ蒼汰〜、美咲さん可愛いよ〜」


「はいはい」


美咲を見てほしくて渡した訳じゃないんだが。


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