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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問






「これからいっぱい言ってあげなさいな。
ちゃんと目を見て言うのよ?予行練習する?」


「いらんわ!意味分かんねぇわクソババア!
言われなくても言うわ!」


「…ん?言ったわね?
言わないとあんたの恥ずかしい過去、
杏奈ちゃんに嘘もくわえていっぱい教えるわよ」


「~〜クソババア!」


「…帰ってきてると思えば相変わらずその口か。
お前はいつまで経ってもガキだな蒼汰」


「…親父」


「あらおかえり〜」


「ただいま。誰か来てるのか?」


「昨日言ってたでしょうが。
蒼汰の彼女さんいらしてるのよ〜、
これがまた可愛くて可愛くて!」


べらべらと杏奈のことを嬉しそうに話す母親と、そんな母親を優しい目で見つめてる父親。


小さい頃から、両親のこういった姿は嫌ほど見てきた。


結婚したら、いつもあんなラブラブでいられるんだ。


勝手に勘違いまでしたくらいだ。


…でも、2人は。


俺をここまで育ててくれた、この2人は。


俺が尊敬する人達であって、俺の目標だ。


杏奈と結婚して子供を生んで、大きくなって誰かを愛して共に生きることを考えるようになる年齢になっても。


俺は杏奈と共にいて、両親のような仲でいたい。


明日しようと思っていた、杏奈の紹介と挨拶。


…今だろ。


明日に引き伸ばしてどうする?


今、伝えたい。


「…杏奈呼んでくる」


今にもキスしそうだった2人に言いリビングを出た。


お風呂場からドライヤーの音が聞こえる。


俺が扉の前に着く頃には、ドライヤーの音は止んでいた。


杏奈が中にいるだろう洗面所。


その扉を勢いよく開いた。


「…っ!?…わ、びっくりしたっ…
…あ、お風呂ありがと。気持ちよかっ…ひゃあっ!?」


無言で杏奈の細い腕を掴んで引き、キッチンに向かって歩く。


「え、あ、ちょっと!?何っ…」


「…親父。帰ってきたから。
明日挨拶する予定だったけど今しとこ」


「…はぁっ!?…えっ!?ちょ、え、待って待って!
あたしパジャマ!ねぇ、パジャマだって!」


「うちの親そんなこと気にしないから」


「ああああたしが気にするからっ!
ちょっと待ってせめて着替えっ…」


杏奈の言葉を無視してリビングに入る。


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