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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
そして唐突にその感覚はやってきた。
とてつもなく深い闇と、ニコチン欲。
…くそ、あんな気持ちいいセックスした後に…
休日だからか両親はまだ起きておらず、しんと静まった廊下を歩く。
サンダルを足にひっかけ外に出たけど、何となく敷地の外には出ず、庭を横切って縁側に腰をおろした。
鳥の鳴き声を聞きながらぼんやりしていると、記憶が蘇ってきた。
数年前、美咲の代わりの女を抱いていた時。
あの時はどの女抱いても満たされなくて、何となく…煙草に手を出した。
虚無感を満たす為に。
喫煙者だった女の煙草を1本貰って吸い、覚えたニコチン。
味も吸い方もどうも好きになれなかったけど、何度抱いても満たされない感覚を、行為の後に無理矢理煙で満たした。
依存するほどではなかったが、女を抱いた後は無性に吸いたくなった。
果てた女をベッドに残し、吸う為に移動して。
そんな俺の吸い方に喜ぶ女もいれば、なぜかときめく女、関係を解消したがる女、一緒に吸い始める女、拗ねて行為の続行をねだる女。
さまざまだったが、とある女を抱くまで吸うのはやめなかった。
続行をねだる女には煙草を奪われて押し倒され、再び行為になだれ込むんだけど、肺に入った煙が気持ち悪くて、振り切る為に激しく抱いた。
あの時1日に何人抱いてたんだろうな俺…
適当に声かけに健とやべー街とかも行ってたしな…
増え続け、減りはしないリストをスクロールして適当に選んだり、途切れ途切れだけどひっきりなしにくる着信から選んだり。
メンヘラがいなかったのが救いだよな。
避妊だけはしっかりしてて、生でいいって言われても絶対に着けていた。
大学はちゃんと行ってたけど、空きコマにも誰かしら抱いてたから、…何しに行ってたんだろうな俺。
いや勉強なんだけど。
美咲を1人で電車に乗せないのは決めてたから、朝にはしっかり帰って、大樹が車買うまではほとんど一緒に通学して。
大学終わって帰ってくると部屋に大学の荷物置いたら俺は女のとこ行って…
大型休みはほとんどマンションに帰らなかった。
少なくとも1年間…杏奈っつー女が現れるまでは。