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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
…うわ、すんげー黒歴史じゃん。
家賃何で払えてたんだろ。
当たり前だけどバイト代か…
ほぼ家賃とゴム代ホテル代煙草代に消えてたな…
そんな生活を続けて、杏奈が現れてからはまたマンションに帰っていなかったけど。
今まで決して美咲以外の女を入れることはなかった自宅に杏奈を呼ぶようになり、やがて同棲を決めたきっかけは、いろいろある中で煙草をやめたことも1つだった。
杏奈を抱くようになり、いつの間にか買わなくなった煙草。
たまに他の女を抱くと全く満たされなくて、煙草を吸っても満たされない時、杏奈を抱くとすぐに満たされた。
そして更に。
あの身体の味を知ってから他の女と連絡を取らなくなった。
数日後には連絡先を全て消去していて。
基本的にちゃんと割り切ってくれる女しか選んでなかったこともあり、ちょっとしたトラブルはもちろんあったが数ヶ月で全員精算した。
…ここまでは、ああクズから足洗えたんだな、と思うけど。
それからはまた別の問題で俺はクズだった。
杏奈がピルの服用をしていたのをいいことに、避妊具の購入が途絶えた。
つまり生挿入。
しかも幾度となく大学を休ませたし、たくさん…泣かせた。
一生傍にいて償っていくことを決めてから早数年。
俺が最近、たまに煙草を吸いたくなるのは、そんな黒歴史を思い出した時。
このまま杏奈の傍にいていいのか
離れた方がいいんじゃないのか
杏奈は実は、俺を恨んでるんじゃないんだろうか
いつか俺より相応しい男が現れて捨てられるんじゃないか…
…そんな女々しい感覚が時々、俺を蝕む。
もちろん杏奈はその闇から幾度となく俺を救ってくれてて、今きたこの感覚も気付いたらなくなっているけれど。
俺が数年前までどうしようもないクズだったことは、なかったことにはならない。
時を経て小さくなろうがこの感覚とは、これから一生付き合っていくことになるんだろう。
だから俺は、杏奈と生きる為に自分を変える努力をした。
数年どうしようもないクズだった分、信頼を取り戻しながら手を伸ばし続けた。
おかげで海外進出もしている大手の会社に就職が決まった。
仕事も杏奈もどちらも手放したくなくて、がむしゃらな日々を過ごした。