この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
だけど現実は厳しく、両立させるのにかなりの時間を費やした。
慣れない社会人生活。
東京という都会の社会人は、俺の理想と違いすぎた。
残業だらけの日々。
人間関係の複雑さ。
半端ない疲労感。
早く仕事を覚えて稼ぎたい
ノルマをさっさと達成して楽になりたい
職場は最初の頃みんなピリピリしてて、俺の性格もあってかなかなか馴染めず。
己のプライドの高さが邪魔して、同期と上手くいかない時期がしばらくあった。
夜遅くに帰宅するため、杏奈が来ていても既に寝ていることが多く、すれ違いが続き、何でこんなところに就職したんだと何度も後悔した。
だけど。
怒涛の連勤で土日も返上して仕事してて、帰ると杏奈が作ってくれたご飯と温かい風呂が沸かしてあって。
朝が壊滅的に弱い俺を起こしてくれて。
その内弁当を作ってくれるようになった時は、嬉しすぎて泣きそうになった。
体調を崩すと、つきっきりで看病してくれた。
いつも、「おかえりなさい」って…めちゃくちゃ可愛い笑顔で迎えてくれた。
…一人暮らしの生活には絶対戻れない、と確信した。
ただ、そんな杏奈に甘えてる自分が情けなくなって、理不尽極まりない言葉をかけたり、イライラもぶつけたりして幾度となく喧嘩して、泣かせた。
たまに自分のマンションに帰ってしまう杏奈を繋ぎ止めたくて、セックスで…身体で縛り付けた。
ようやく仕事に慣れてきて、心に少し余裕が出来て、杏奈ともなんとかうまくやっていた…その矢先。
美咲と大樹が結婚した。
俺は再び闇に落ちかけて、…いや、落ちた。
かつてライバルだった…というか最初は全く相手にされてなかったけど、実はものすごく愛情深くて、今では男で一番俺を理解してくれてる大樹。
物心つく前から一緒にいて、いつから好きだったかなんて分からない…いろんなことがあって、それを乗り越えながら、一緒に成長してきた美咲。
大好きな2人の結婚。
もちろん、すごくおめでたいし、心の奥底から祝福した…んだけど。