この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
人に頼ることにして、翔平と麻友ちゃんに相談した時。
そこで、杏奈のご両親が事故で他界していることを知って。
…信じられなかった。
確かに、まだ高校生の女の子なのに一人暮らししてるな、親の話って聞いたことねえな、と。
「親心配しねえの」の俺の言葉に、何て伝えようと長い時間迷った挙句愛想笑いされたな、と。
…そういえば、女の子の一人暮らしの部屋には似つかない小さな仏壇があったな、と。
思ってはいたけど…
小学生で、いっぺんに親を失ってるなんて…
それでもまっすぐ、芯を持っていて、心が綺麗な杏奈。
引き取られた先のおばあちゃんに大切に育ててもらった、それももちろん、だけど。
杏奈には、何かきっと信念があるんだ。
大切な人をいっぺんに失って、その悲しみは俺なんかじゃ到底分からない、計り知れないものだろう。
ほんとなら落ち込んで、性格に影響が起きててもおかしくない、だけどあんなに明るくてまっすぐでいられるのは、きっと杏奈が素直で、辛い経験を自分なりに乗り越えて、それでいて何が一番大切なのかを分かってるんだ。
そんな杏奈が、どうして俺なんかを…と思ったけど。
もっとふさわしい男がいるんじゃないか
そう思ったけど。
一度人を好きになったらずっと好きでい続ける自分の性格か、どうしても杏奈に惚れ込んでしまっているからか。
杏奈を手放す気はさらさらなかった。
だから…だから。
「杏奈…俺達少し、距離を置かないか」
俺、お前のために変わるから。
杏奈を守れる立派な男になるから。
美咲に告白してきっぱりさっぱり振られて、ケリつけてくるから。
言葉足らずなことが多い俺の言葉を杏奈は了承してくれて、たっぷり愛し合ってわかれて。
俺は仕事一直線で生きて。
たまに大樹と飲みに行って。
一度だけここに…実家に帰ってきて、杏奈のことを話して。
両親からの言葉に、温かさに触れて泣いて。
「次、一緒に連れて帰ってくる」と約束して。
そして…