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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問






人に頼ることにして、翔平と麻友ちゃんに相談した時。


そこで、杏奈のご両親が事故で他界していることを知って。


…信じられなかった。


確かに、まだ高校生の女の子なのに一人暮らししてるな、親の話って聞いたことねえな、と。


「親心配しねえの」の俺の言葉に、何て伝えようと長い時間迷った挙句愛想笑いされたな、と。


…そういえば、女の子の一人暮らしの部屋には似つかない小さな仏壇があったな、と。


思ってはいたけど…


小学生で、いっぺんに親を失ってるなんて…


それでもまっすぐ、芯を持っていて、心が綺麗な杏奈。


引き取られた先のおばあちゃんに大切に育ててもらった、それももちろん、だけど。


杏奈には、何かきっと信念があるんだ。


大切な人をいっぺんに失って、その悲しみは俺なんかじゃ到底分からない、計り知れないものだろう。


ほんとなら落ち込んで、性格に影響が起きててもおかしくない、だけどあんなに明るくてまっすぐでいられるのは、きっと杏奈が素直で、辛い経験を自分なりに乗り越えて、それでいて何が一番大切なのかを分かってるんだ。


そんな杏奈が、どうして俺なんかを…と思ったけど。


もっとふさわしい男がいるんじゃないか


そう思ったけど。


一度人を好きになったらずっと好きでい続ける自分の性格か、どうしても杏奈に惚れ込んでしまっているからか。


杏奈を手放す気はさらさらなかった。


だから…だから。


「杏奈…俺達少し、距離を置かないか」


俺、お前のために変わるから。


杏奈を守れる立派な男になるから。


美咲に告白してきっぱりさっぱり振られて、ケリつけてくるから。


言葉足らずなことが多い俺の言葉を杏奈は了承してくれて、たっぷり愛し合ってわかれて。


俺は仕事一直線で生きて。


たまに大樹と飲みに行って。


一度だけここに…実家に帰ってきて、杏奈のことを話して。


両親からの言葉に、温かさに触れて泣いて。


「次、一緒に連れて帰ってくる」と約束して。


そして…


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