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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問






「どうしたの?蒼汰、改まって。
あたしに話ってなーに?」


いつ見ても美しくて、見た目が美しいのは小さい頃から変わってないけど、大樹と付き合ってからはもうなんと言うかとんでもなく…


洗練された美しさの中に本人が本来持つ天然さがあって、それによって取っ付きにくさとかは全くなくて…


はっとするほど綺麗で可愛い、大好きな、大好きだった女、美咲。


すっぴんのくせに恐ろしいほど綺麗な顔でこちらを見て、部屋に招いてくれた。


大樹は、おそらく気を使ってくれたんだろう、違う部屋で在宅ワークしていた。


「コーヒーどうぞ〜」


にこにこと俺の前にコーヒーを置いて、俺の向かい合わせの席に座って美味しそうにコーヒーを飲む姿に、なぜかあのとき、高校生のときの姿が重なって見えたな。


俺が話す拙い言葉を、ときどき頷きながら聞いてくれて。


「俺は、美咲が好きだ。大好きだった」


初めてちゃんと、ちゃんと美咲に告白をした。


もっと早く告白して振られていれば、杏奈を傷付けずに済んだのかな。


もっと早く告白していれば、未来はちょっとは違っていたのかな。


いくら考えても、過去のことだし正解は分からない。


それを試すすべもない。


これは俺なりの、杏奈と向き合う為の解決法。


間違っていようがおかしかろうが、俺は杏奈と共に生きるって決めたから。


美咲は、俺がずっと美咲を好きだったことを知っていた。


嬉しかったと。


だけど俺のことを1人の男として見ることは出来なかったと。


いろいろあった、本当にいろいろあった、けど…


ずっと一緒にいてくれてありがとう、と…


気持ちを伝えて、関係が崩れるのが怖かったことを話すと。


「…ふふ。そうだね、高校生のときは…
もしかしたら距離置いちゃったかも。
今はね、絶対そんなことしないけどね」


小さい頃から一緒にいたから分かること。


いろんな意味で、親よりお互いのこと知ってるからな。


一緒に、いすぎたのかもしれない。


知りすぎたのかもしれない。


今となってはそう思う。


だってさ、お互いのこと何でも知ってて、身体のすみずみまで、気持ちところも知ってて。


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