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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
杏奈SIDE
「ここから歩くのっ?」
「そう」
「どこ?見えないけど」
「この上」
「…上?」
蒼汰の指さす先を見て首を傾げる。
「見えないけど…あの先に学校があるの?」
「そうだよ」
「…えっ待ってどうやって建ってるの?」
素で質問すると弾けたように爆笑する蒼汰。
繋いでた手を離して笑う蒼汰をぽかんと見つめる…
「ははっは!そうだよな、驚くよなー。
この辺だったらほぼ山の上にあるんだよ、
山の上というか丘の上?というか」
「そうなの…?通学大変じゃなかった?」
「あーまあ坂とか階段だったしな…確かに大変では
あったけど、あのとき疑問に思ってなかったんだよな、
山の上にあることに対して」
「…もしかして全部の学校が山の上にあるの?」
「あーいやそんなことはない。
普通に平地に建ってる学校もあるよ。ただなぜか
自称進学校は坂の上だの丘の上にあることが多いんだよな」
「へぇ、蒼汰行ってたとこは進学校?」
「まあ一応県内一の進学校だったらしいけど」
「おお」
ぱちぱちと拍手すると可笑しそうに笑う蒼汰。
「とりあえずいい学歴持ってりゃいい就職先あるかなーって
あの時は安易に考えてたんだよなー…」
「え、すごい。あたしそんなこと考えたこともなかった」
「まあ学校入るときくらいだよ、めっちゃ頑張ったの。
あとは遊んだりサボったりな、真面目じゃなかったし」
美咲さんと同じところ行くために頑張ったのもあるんだろうな、と思いながらも相槌をうつ。
「ここ毎日通学してたんだね」
「そー。大変だろ」
「体力つくね」
「そー。帰りは楽だけどね」
その言葉にくるりと振り返って数歩分降りてみる。
ほんとだ。
「思ったより急じゃないね」
「だろ。どこ行くのかと思ったわ」
差し出される手。
そっと重ねて、また隣に並ぶ。
「こうしてると蒼汰と一緒に通学してるみたーい」
「おう。言っとくけどレアだぞ、俺の隣歩きたい女
すげーいたんだからな」
ムッ。
「今はもうあたしだけだもんねー?」
そう言ってみると、蒼汰は笑ってあたしを見て。
「特等席だもんな」