この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
蒼汰SIDE
「なつかしー、俺ここの席だった」
「そうなの?えーっ、ねえ座って!」
「おおお」
杏奈に強制的に座らされ、
…なぜか杏奈が教卓の方に向かう。
「…えっあれっ」
隣とか後ろじゃなくて??
教卓に立った杏奈が、にっこにこの笑顔で俺を見て。
「矢野くーんっ!」
大きく手を振ってきた。
…えっ
…あの子は一体何をやってんだろうか?
とりあえず思うことは「なんだあいつ可愛い」だけど…
つられて手を小さく振ってみると、俺の反応がお気に召さなかったらしく、頬を膨らませて。
「矢野くんったら…もうあたし達、
先生と生徒って関係じゃないんだよ…?」
…
…ん?
あー…なるほどね。
のってやろうじゃん。
意味ありげに微笑み、ゆっくり立ち上がって杏奈に近付く。
「そうだね。…俺の卒業と同時に矢野杏奈になるって
約束したもんな?香坂せんせ?」
「っ!?そ、そうだよっ、…じゃない。そうよっ?」
「なら、これからはいろいろと解禁になりますね?」
「…ん?」
きょとんとした顔をする杏奈。
「もう何も気にすることなくあなたに触れられる…
じゃあまずは、俺に抱かれてみませんか?」
「…!」
杏奈の身体を黒板を背に閉じ込め、顎を持ち上げ唇を重ねようとして…
「…で。これいつまでやんの?」
触れる直前で、一気に素に戻った。
少し距離をとると、口を手で覆った杏奈がぴょんぴょんと跳ね出す。
「〜〜蒼汰っすごい!なにそれぇえ!
芸能界入れるよその演技力!」
「はあ?意味の分からんこと言うな」
「ほんとだって!びっくりしたぁあかっこよかった!」
「そりゃあどうも」
「こんなシーンありそうだよドラマか何かに!!」
「そうか。女子が憧れるだろうシチュエーション
すっとこばしてなぜか先生役するその謎の機転こそ
芸能界で生かせると思うぞ」
「機転がいいのは蒼汰の方じゃん!」
「おう、我ながらうまく空気読んだぞ」
そして見つめ合って、2人で笑った。
「うふっふふふふ」
って杏奈はちょっと不気味だったけど。