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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問





友達と遊ぶ方が数倍楽しかったしな。


「学生のときほんと楽しんでたなー…
カラオケ行ったあとは買い食いして
人ん家行ってゲームすんの。めっちゃ楽しかった」


「何それ楽しそう…」


「あと夏は海だな、みんなでチャリで」


「えええ〜いいなぁ青春〜〜」


「夏休みはほぼオールで遊んでた」


「羨ましい…蒼汰と同級生がよかった…」


そんな他愛ない話をして、もし杏奈が俺と同級生で同じクラスだったら間違いなく惚れてたな、会う時期違ってもくっついたんじゃねえかな、と思いながら杏奈を見つめた。


すると。


「んー…、そっかそっか…」


頷いてから、杏奈は少し考える素振りを見せて。


「もし蒼汰と美咲さんがそういう道に進んでたり、
蒼汰が美咲さんを追いかけて東京来なかったら
あたし達、絶対今ここに一緒にいないよね。
それ考えるとすごいなって今思った」


あー…確かにな。


「そうだな、出会ってなかったかもしれないしな」


「改めて思うとすごくない?蒼汰と美咲さんが
お付き合いしてたかもしれないし、そしたら間違いなく
あたしはここにいないわけだし、あの日だって
蒼汰があたしを助けてくれなかったらこんな関係まで
発展してなかったかもしれないし…すごいね、
運命ってすごい。おもしろいね」


その言葉に頷いて、まだ懸命に何かを言ってる杏奈を見つめながら思う。


…いや、たぶんどんな形であれ、どんなに時間がかかっても出会ってた気がするんだよな。


そんなクサすぎること、本人には絶対言わないけど。


机の間は、人1人通れるくらいのスペースがあいていて。


その隙間をなくすように机をぴったりくっつけ、頬杖をついて杏奈を見つめた。


俺を見た杏奈と少しの間見つめ合い、やがてぱっと顔を逸らされる。


そして。


「んっふふふふっ顔がいい」


「…」


…あ?


「そんな至近距離で見ないで…照れるしおもしろい」


「あ?おもしろいってなんだ」


「だって珍しく真面目な顔してるから、っふっふっふ」


「何笑ってんだコラ」


こういう予想外すぎるところがおもしろいんだよな。


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