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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
杏奈の頬をむにっとつまんで。
にっこにこの笑顔に、くそっ可愛い、と思いながら…
唇を重ねた。
一瞬だけ重ねて離れると、きょとんとする杏奈。
そして一気に顔色を変える。
「どっ…、誰か来たら…っ」
「誰も来ねえよ。土日だもん」
「でもほら、部活してる声…」
「グラウンドだろ?教室には来ないし」
「そ…なのかな」
「職員室から来る最中も誰もいなかっただろ」
「そだね…」
「もっかいしよ」
杏奈の身体を椅子ごと抱き寄せ、見上げた隙に唇を奪う。
唇を軽く啄んで。
まだ遠慮がちな杏奈は唇を開いてくれようとしなくて、頑なに閉じてる…
けど。
柔らかくて細い髪を撫でながら、首筋に指を這わす。
びく、と身体を揺らす杏奈。
上目遣いで見つめてきて、小さく笑うと杏奈から唇を重ねてくれる。
「…可愛いじゃん」
「…な、…っんん」
開いた唇に舌を挿し込む。
俺の胸板を押してた手がゆっくり背中に回され、思わず口角が上がった。
かーわいい。
舌を絡めてる間、外で聞こえる野球部の声が懐かしかった。
やがてその音よりも、目の前の存在に夢中になって…
他に誰もいない教室で、たくさんキスを交わした。
杏奈SIDE
それからも、過去の話に花を咲かせて。
教室を出たあとは、学校内を案内してもらった。
今までお互いの学生時代の話なんてしたことなかったけど、今日ここに来れたおかげで蒼汰の高校生時代のことをたくさん知ることが出来た。
蒼汰が3年間、過ごした高校。
そこに今、卒業生として来てる蒼汰の隣に立ててるあたし。
嬉しいなぁ。
幸せ。
ある程度校内を回ると、再び職員室の先生と事務室にお礼を言って、学校を出た。
ずっと疑問に思ってたことを聞いてみる。
「ねえ蒼汰、卒業して数年経ってるんだよね?
顔覚えてもらえてるもんなの?」
どうやら数日前からアポをとっていたらしく、祝日のはずなのに職員室には数人の先生らしき人達がいて、あたし達が中に入ると囲まれて「久しぶりだな矢野!」「お前ますますイケメンになったな〜」とか何とか和気藹々と蒼汰と話してて。