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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
「んー、がっつり覚えられてる。
俺がお世話になった先生、残ってる人多いんだよ」
そうなのか…
そんな何年も覚えてもらえてるものなの?
学校によるのかな?
母校の先生とまだ交流あるって凄いなぁ…
特にお世話になった先生、はもちろんいるけどそれは先生と生徒の関係だし、卒業してからも会いたいとは思わないなー…
今でも蒼汰、ちょくちょく大学時代の友達と飲みに行ったり日帰り旅行したりしてるけど、帰ってきたあと話してくれる会話の中に出てくる名前がいつもバラバラで。
学生時代の友達がたくさんいて、会うことがあるのは分かるんだけど、お世話になった先生とまで会うのはすごいよね。
結婚の挨拶の為の帰省だってことも知ってたらしき先生方から「おめでとう」の言葉と、
「矢野お前どんだけ美人な奥さん捕まえたんだ」
などなど、有り難いお世辞もたくさんいただいた。
…もうっ。
ほんとこの人、こういう一言くれないんだよね!
家出る前に教えてくれてもよくないかなぁ!?
「お世話になった先生方に紹介するから」
とかー!
何も考えてなかったあたしもあたしだけど!
「帰省するたび顔出してたからな。
さっきあの中にいた男の内の1人、元同級生なんだけど
友達だからよく会いに行くんだよね」
「…へぇ」
「俺ほら、公務員資格とるのに世話なったし」
さらりと言われた言葉を相槌で聞き流しかけて、
…目を剥いた。
「…えっ!?公務員!?」
「おおっ、びっくりした…え?言わんかったっけ」
「え…!?知らない聞いてない!
資格持ってるの…!?」
「うん。就職に有利かなって」
「…あたし聞いてない」
「えぇ、言った気するけど。
あーでも言ったのってワープロ1級だけか、もしかして」
「…それは聞いた」
「簿記2級は?」
「…初耳」
「英検準1級」
「…それも初耳!」
「別にこの辺はわざわざ言う必要なくね?」
睨むと、わざとらしく肩を竦める蒼汰。
「お互いのこと何もかも知っとく必要はないじゃん。
お前だって俺に言ってないことあるだろ」