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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
「そうだけどさー…。それとったの在学中でしょ?」
「うん」
「あたしで遊びながら自分はちゃんと勉強してたってこと?」
あっ、面倒くさそうな顔された。
ていうかめんどくさいこと言っちゃった。
だけど後戻り出来るわけでもないから、小さく傷付きながら頬を膨らませる。
案の定辛辣な言葉が返ってくる。
「お前なあ…それとこれとは別だろ?
勉強もせず夢中になってほしかったのか?
そこ干渉されると腹立つんだけど。
俺が資格とるのとお前のこと抱くの何の関係あんの?
そこまで考えなしじゃねえよ、馬鹿にすんな」
身構えたけどやっぱり辛辣で、顎に梅干しを作る。
煩わしそうにがしがしと頭を掻いて、
はあ、とため息をついて先に歩いて行ってしまう蒼汰。
…数年前が、フラッシュバックする。
セフレ関係だった時のある日、夜中に呼び出され、眠い目を擦りながら向かった彼のマンション。
お酒と明らかに女物の香水の匂いをぷんぷん撒き散らしながらあたしを抱く蒼汰の下で、生理前だったか情緒不安定の時だったかでつい、口からぽろりと言葉が溢れた。
「…あたし以外の子、抱いてから帰ってきたんですか?」
男女交際が幅広いことは勿論知っていた。
あたし以外にももしかしたらセフレみたいな子がいる、それも覚悟の上で会ってたはずなのに。
蒼汰から女物の香水の匂いがするなんて今更で、そんなこと初めてな訳じゃなかったのに。
そう言葉をこぼしたあたしを満足するまで抱いた後、彼はあたしをベッドに残して立って。
「…お前、めんどくさい。落ち着いたらさっさと帰って」
あたしのことを見ることもなく、煩わしそうにがしがしと頭を掻いて、ため息をついて部屋を出ていった彼に、あたしは…
…ごめんなさいって泣きながら追いかけて抱きついたなあ、と後ろ姿を見ながら思う。
じゃあ今は?
今のあたし達は口喧嘩なんて珍しくない、だけどあの時傷付いたあたしと同じようなシチュエーションが起きたら?
結婚前提で付き合ってても、こういうフラッシュバックが起きることはよくある。
喧嘩中は特に。