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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問
だけど今のは確かに蒼汰を怒らせる言葉だったかもしれない。
セフレから恋人に昇格したあたし達は”干渉しない”期間がどうしてもあったから、お互いの知らないところがまだたくさんある。
ある程度知っていておかしくない”恋人”とは違い、必要最低限のことしか教えて貰えてなかった。
あの時はほんとに彼女になれるなんて思ってなかったし、抱かれれば抱かれるほど彼のことを知りたくて堪らなかったけど、干渉すんなって言われてたし傍にいられるだけで幸せだと思い込もうとしてた。
それで今、空白のあの時を埋めても問題ない関係になったのに、ちょっと言っただけで…
…そんなに怒ることないじゃんねぇ!?
それに「それとこれとは別」って…
こっちのセリフでもあるんですけど!!
資格持ってたこと言う言わないだけであって、勉強せず夢中になってほしかったなんて誰も言ってないし馬鹿にもしてない!
舌戦なら負けないよ!
と口を開こうとすると。
あたしの数メートル前を歩いてた蒼汰が突然くるりと向きを変えてこちらに早歩きで向かってきた。
そしてあたしの肩をがっと掴み、
「…ごめん言い過ぎた」
あっさりと謝られた。
「知らなくても無理ねーわ、だって言ってねーもん。
八つ当たりすんのは違う、俺が悪かった」
何のためにここ連れてきたかって、俺のこといろいろ知って欲しかったからなのに、とぼやいた蒼汰は、あたしの身体をぎゅっと抱き締めて。
「つってもお前、女で遊ぶことしか考えてないその辺の
猿みてぇな奴らと一緒にされんのはごめんだからな。
確かにすげー遊んだし大学サボることも何度もあったけど
単位落としてねーし資格とったしちゃんと就職してるし」
「…」
プライドが高いのは相変わらずだな。
と思いながらも、遊びつつちゃんと勉強して資格たくさんとって試験には真面目に取り組んで卒業出来たのは蒼汰の実力だ。
「…うん。あたしもごめんね」
いつもならここから舌戦が始まるところなんだけど、今日はお互い素直な日みたい。
旦那さんの地元連れてきてもらってまでする内容の口喧嘩じゃないしね。