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want to be ...【短編集】
第8章 矢野家訪問






「おいで」


大好きな声、大きな手、実は朝からずっと気になってる襟足の寝癖。


ああ、あたしもうすぐこの人の奥さんになるんだな。


差し伸べられた手に自分の手を重ねて、歩き出した。










蒼汰SIDE


「3日間、本当にお世話になりましたっ」


「こちらこそ!会えてほんとによかった。
また蒼汰のこと教えて」


「もちろんです!なんなら毎日連絡しますね」


「ほんと!?毎日連絡くれるの!?
ねー聞いた!?克宏!嬉しいっ」


「おーおー、よかったな」


母親の横で疲れたように突っ立ってる父親。


そして、照れくさそうな顔をする杏奈と仏頂面の俺。


母校を出たあと散歩がてら街の方まで行って、ウインドウショッピングして家に戻った俺たち。


待ち構えてた母親に捕まった杏奈はなぜか一緒にお菓子作りを始めて。


…えー帰る前にもう1回抱きたかったのに。


なんて言おうもんならどんな暴言が飛び出してくるか分からないから父親と仕事の話をしていると。


母親が杏奈に俺とのことを聞き始めて杏奈も馬鹿正直にいろいろ暴露しやがってしまいには父親まで俺そっちのけで2人の話に乗って和気藹々と俺をディスってきやがって…!


途中まで口答えしてた俺もだんだん面倒になって聞き流していた。


すると女2人のマシンガントークについていけなくなった父親が無言で俺に視線を寄越して。


「尻に敷かれるのが目に見えるな」


なんて言いやがった。


それはもう付き合う前から何となく見えてたけどさぁ。


それからも2人はつまみ食いながら飲みながら夜遅くまで延々と喋っていた。


最終的には寝落ちした杏奈を俺がおぶって俺の部屋連れてって。


今日も起きてからも今までずっと喋ってた。


それで今も車から降りようとしてんのにまた2人でマシンガントークが始まって、


…しゃーねえなあ。


先に車を降りて荷物も降ろし、待つことにした。


ここまで仲良くなんのもすげーよな…


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