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want to be ...【短編集】
第9章 専属お料理教室
「それでね、玉ねぎをまな板の中心に置いて、
…あーあーそれ指切っちゃうよ」
さっそく猫の手を忘れる蒼汰の指を丸めさせる。
「ここから半分に切ってみて」
するとゆっくり刃を入れ、…途中から両手で包丁を持って少し持ち上げ、すとんっ!と振り下ろして半分に切った蒼汰。
ころんと勢いよく2つになった玉ねぎが転がる。
「…」
誰が途中から両手持ちしろっつったのよ、という突っ込みはもう入れないでおく。
「…ちなみに蒼汰ってさ、今まで料理したことないの?」
1つを持って切り口の断面を眺めてる蒼汰に聞くと、少し考える素振りを見せたあと、「ねぇな」と呟く。
「ほんとに?調理実習とかなかったの?」
「あったあった。いや俺何もさせてくれなかったんだよな、
同じ班の女達に「座ってるだけでいいから見てて」って…」
「えぇそんなことある…?」
…いや。
これはどっちの意味だろうか。
恐ろしいことをするから離れさせたのか、蒼汰に見てほしくて座らせたのか。
大幅に前者よりでどっちもかな、と勝手に結論づける。
「母親が調理?かなんかの免許持ってるから
料理してんの見てたことはあるけど
包丁両手で持った方よくね?ってずっと思ってた」
…この人に料理のイロハを少しは教えておいてほしかった、と思うのはいけないことだろうか。
まだ会ったこともない蒼汰のお母様に思う。
「片手で添えないと飛んでっちゃうんだよ」
「え、拾えばよくね?」
なぜ落とす前提なのか。
「そんなに硬いものないから片手で切れるんだよ」
「両手で切ったらちゃんと力入るじゃん」
「力はいらないの」
固定するという概念がないんだろうか…
「片方貸して。やって見せるね」
そもそも料理したことない人に玉ねぎのみじん切りはちょっと難しいよね。
「こうやってあらかじめ切り込み入れておくの。
そしたら時間短縮だし切りやすいんだよ」
言いつつもう片方の玉ねぎも同じ手順でみじん切りすると。
「すげー!すげえな杏奈!めっちゃ細かくなったじゃん!」
「これがみじん切りだよ〜」