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want to be ...【短編集】
第9章 専属お料理教室
「あたしも初めて聞いた〜」
とりあえず換気しよっか、ということで換気扇を回して、他のサイトで見つけた「メガネをかけて切る」を実践してみてもらうことにする。
あたしも蒼汰も視力は悪くないから普段からコンタクトやメガネは使わないんだけど、蒼汰はおしゃれ用とPC用でメガネを持っているから、かけてみてもらうことにした。
「…、あーまだしみる…」
「…」
「なあ、これどこまで切ればいいの。まだ?
…ていうか、見すぎ」
彼がメガネをかけている姿はあまり見ることがないから思わずガン見。
横顔が最高にかっこいい…!
「そんな見んな」
「えーだって〜」
「だってじゃねぇ、なんか恥ずい」
「えー?気にせず切ってて?」
「なんでそんなに見んの?」
「え、だってかっこいいんだもん。みとれてた…」
そう言うと、切ってる手を止めた蒼汰。
ちゃんと包丁を奥に向けて置き、綺麗な顔が近付いてくる。
ちゅ
「…!」
触れるだけのキスをされ、ぽかんとしている内に意地悪そうに笑った彼が離れていき、包丁を握り直す。
…な、
何そのファンサービスみたいなの…!
思わず口を押さえて、ふと触れた自分の頬が熱くて驚いて、不意打ちのキスにドキドキして、心がふわふわして…
…好きっ
きゅーってなりながら、何とか洗い物を続けてると。
「痛っ」
「え?」
…いつか見た彼の姿が隣にあった。
蒼汰SIDE
「よかった、そんなに深くなくて」
「地味に痛い…」
「よそ見しちゃったの?」
その質問に、いや杏奈が可愛い顔で見てくるから手元狂ったんだよ、…とは何となく言えなくて、うん、と頷いた。
「みじん切りは慣れたらぼーっとしてても出来るんだけど、
初めてなんだから気をつけないとっ」
「はーい」
左手の人差し指に斜めに入った線。
消毒して絆創膏を貼ってくれた杏奈が、よし、と立ち上がる。
「あたしもいっぱい指切っちゃったんだー、
一時的絆創膏だらけだったよ」
「そうなの?」
「猫の手をどうしても忘れるんだよね」
「あー、俺も忘れてたな」
…ということにしとこう。