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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
確かに、くじの列はかなり長い。
でもせっかく貰ったのに何もしないなんて嫌だし!
やだ〜だのだるい〜だの言っててうるさい蒼汰の腕を引き、エレベーターを降りて列の最後尾に並ぶ。
「…景品何よ?」
「知らん」
「蒼汰見てきて!」
「やだ」
「ね~え~」
「…こんな時だけ可愛いとか許しません」
「こんな時だけなんだ…」
「うそうそ。いつも可愛いです」
優しい言葉に蒼汰を満面の笑みで見上げると、口をタコのようにへこまされる。
「…ふぇ!ひひゃい」
「っぶ!ウケる」
何だこの男!
ケラケラと笑ってあたしの頬から手を離し、くじの先頭の方を見る蒼汰。
「…なぁこれさ。もうまともな景品全部ないって。
帰ってベッドでイチャイチャしよ?」
「ダメ」
「けち」
「けちじゃない!」
「…分かった、こうしよ。
しゃあなしくじには付き合ってやるとして…
6枚あんじゃん?3回ずつやって、
いい等当てたやつの言う事聞く!これどう?」
「乗った、あたしくじ運いいもん!」
「俺毎年おみくじ大吉だし!」
「…、あたし500円くじで1等当てた事あるし!」
「ボーナス超入ってたから絶対1等ゲットだわ」
「いやあたしが1等とるもーん!」
…と、言い合って。
他愛ない話しながら、蒼汰からのちょっかいを受け流しながら順番が来るのを待つ。
列が短くなってきたら、景品が書かれたボードも見えて。
「…な、杏奈。俺マッサージチェア狙う」
「無理でしょ」
「じゃあ温泉旅行」
「もっと無理でしょ」
「…そんな事言ってたら俺に負けますよ~?」
「…負けないし!あたし1等の海外旅行…
…えっ、もうないじゃん。誰か当てたんだ」
「さっき大袈裟なくらいカランカラン鳴ってたもんな」
「でも温泉行きたいよね~」
「うん、行きたい。俺はそれより車ほしい」
「…ないよ?景品に」
「なんかこれで当てた車って不安じゃね?」
「何でー?」
「何ででも。車は自分で買うよ。
ずーっとペーパードライバーのままだし」
「あ、免許は持ってるんだ?」
「ん。上京する前美咲と取りに行った」
「え!美咲さんも持ってるの!?」
「うん」