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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
「大樹~、お前制限速度真面目に守ってんよな?」
「…美咲乗せてる時だけな」
「相変わらずだなお前」
ほんとに大事なんだな、美咲さんの事…
ちら、と蒼汰を見上げてみる。
「…何だよ。俺は守る男じゃねぇぞ」
「…なーんだ」
「何だとは何だ」
「でも蒼汰が守ってたら違和感あるかも」
「…どういう意味かな杏奈ちゃん」
「え~何かね、道空いてたらめちゃくちゃ飛ばしそう」
「おう、よく分かってんじゃねぇか」
「…え?」
「え、って何。飛ばすだろ普通…
しかも今日はすげーいい車乗ってるからな。
よし、飛ばすか~」
「待っ…え、え、」
だんだん速くなっていく車。
「…おい、蒼汰」
「…っ」
そろりと速度計を見ると、既に120キロ出てて…
それなのに更にスピードを上げていく蒼汰…
「おい蒼汰…ふざけんなよ、捕まったらどうすんの」
「あーそれは大丈夫この辺アレないから」
「…」
殺す…って後ろから聞こえた気がするんだけど気のせいだよね…
しかも…
「ひぃっ…」
じ、助手席だと凄く速さが伝わってほんと怖い…!
更に。
恐ろしいスピードで、前を走る車スレスレに近付き追い越して、再び右側車線に戻る。
…という動作を何度も繰り返してて。
危ない怖いー!
「…蒼汰!」
後ろで大樹さんが叫んでるけど、蒼汰たぶん聞こえてないよね…!?
「ねぇ蒼汰っ…」
「やっべぇ超楽しー!」
…ダメだこの人!!
ちらりと後ろを振り向くと。
…えぇっ!?
美咲さんまだ寝てるんですけど!
思わず口があんぐりと開く。
えっえっ、気絶してるんじゃなくて!?
憤怒のオーラが出てる大樹さんの肩に寄りかかり、相変わらず可愛らしい寝顔を見せて眠ってる美咲さん。
ガタン!と大きく車が揺れたけど、全く起きる様子がない。
…つっ、強者!
こんな運転で寝れるなんて…!
…そこからは。
「ひゃっほーいっ」
なんて言いながら暴走してる蒼汰の運転により、あたしは遂に気絶してしまった。
…次、起きれますように…
もう2度と目が醒めなくてずっと夢の中なんて事になりませんように…