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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
「あたしはね、海行きたいなって思ってるの~」
「だーかーら。それは帰ってからでもいいじゃん。
ただの塩水入るより思い出に残る事しようぜ」
「そっか〜。じゃあ蒼汰は何したいの?」
「山登り」
「…本気で言ってる?」
大樹さんが冷めきった声で聞くけど、キラキラと輝いてる蒼汰の瞳。
あたしは、視線の先にある富士山と蒼汰の顔を交互に見て、苦笑い。
「温泉入りに来たんじゃねぇのか?」
「だって楽しそうじゃね!?」
「…」
すっごい嫌そう…
大樹さん、すっごく嫌そう!
「ねぇ海は〜?」
「…美咲が行きたいなら行こうか?」
「何その切り替えの速さ」
「杏奈ちゃんは何したい〜?」
…え!
ここであたしに振りますか!?
「杏奈…当然山登りだよな?」
「えー!一緒に海行こうよ〜」
「…」
ど、どうすれば…って、あたしにも一応考えあるんだけど、言ってみてもいいかな…
「…あ、あのっ、おいしいもの巡りしたいです!」
ぎゅっと目を閉じて、手を上げて言ってみる。
一瞬沈黙が流れて…
「一番いい案出たな」
「それいい!凄くいい!杏奈ちゃんナイスー!
おいしいもの巡りあたしもしたいっ」
「チッ、山登り…でも腹減ったわマジで」
「さっき見てたパンフレットに
おいしそうなラーメン屋あったよねっ」
「あ?こんなところ来てまでラーメンかよ。
お前マジでどんだけラーメン好きなの」
「えー?蒼汰もラーメン好きでしょー?」
「…まあうん、お前程じゃないけど」
呆れたように笑う蒼汰。
美咲さんは無類のラーメン好きで、中学生の時学校帰りによく一緒に行ってたらしい。
「大樹も行ってんだろ?美咲とラーメン」
「…まあ何でもいいつったら絶対ラーメン屋かな」
「何でもいいって言うなよ」
「だって食いたいもん食わせてやりたいじゃん」
「…」
「わーい!大樹好きーっ」
…ぎゃぁぁぁあ!?
何それ、かっこよすぎなんですけど!!
しかも大樹さん、しれっと言っても全然嫌味に聞こえなくてもう最高すぎる!!
「…お前くらいだよ、
そんな事言ってもキモく聞こえねぇの。
…っておいこら杏奈」