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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
「ちょっと杏奈ちゃーん…そんなおっきい声で
セックスなんて言っちゃダメでしょ?ん?」
「!!」
さ、最悪…
ここ道だよって…蒼汰に言ったのあたしなのに!!
恥ずかしくなって思わず
「…うおっ!びっくりした」
蒼汰のジャケットの裾をまくって、その中に隠れた。
「…ねぇ杏奈ちゃん。それ歩きにくくねぇの」
「…」
歩きにくい…けど、恥ずかしくて顔出せない!
「…蒼汰のバカぁあ」
「俺に八つ当たりしないでくださーい」
「蒼汰のせいで〜…」
「俺のせいにしないでくださいよ〜」
「恥ずかしいよぅ…」
ぐりぐりと蒼汰のジャケットの中で頭を振ると、突然蒼汰がジャケットを脱いで、驚いて見上げたあたしを見下ろす。
そしてまた突然…
「…ぶっは!!」
吹き出して笑い始めた。
「ちょっ…は?蒼汰!?意味分かんない!
何で笑ってんのぉお」
あたしの手を握って早足で歩き出す蒼汰を懸命に追うと、なぜか連れて行かれたのは多目的トイレ。
入って鍵を締めた蒼汰は、クックッと笑いながら鏡を指さした。
「…!」
鏡に映る自分を見て驚いて、慌てて蒼汰の手を離し、乱れた髪を整える。
「おまっ…面白すぎ!
つーか歩いてる時気付かんかったんかよ」
「酷いー!直してくれてもよかったのにー!」
「だっ…ぶっふ、マジウケんだもん、あははっ…」
何この人!
お腹を抱えて笑う蒼汰の笑い声が、トイレの中に響く。
バシッと叩くと
「いって」
って言いながらあたしの髪を直してくれて、抱き寄せられてポンポンと頭を撫でられた。
「…はーウケた」
「…笑いすぎだと思う」
「だってあんな髪乱れたらさ、いろいろ妄想しちゃって」
「何を…?」
「そーりゃ、あれでしょ。ベッドで乱れる杏奈ちゃん」
あたしの身体を少し離してそう言い、おでこにキスを落としてきた蒼汰。
「俺が切ったのだいぶ伸びてきてんなぁ」
「…うん」
「この長さがいい乱れ具合だからな〜」
「…蒼汰ってほんと変態だね」
「えっ今更?」
ケラケラと笑う蒼汰を睨み上げ、抱き締められてる腕から逃れようとする。