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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
「お前絶対あいつらの事意識しすぎて
喋れなくなるだろうから」
「…」
意味が分からない…
結局蒼汰が思いついたらしい「いい事」は教えて貰えなくて。
気になって仕方なかったあたし、だけど…
「やーん、すっごく綺麗〜!」
「凄ーいっライトアップしてるー!」
「ホテルみたーいっ!」
「美咲さん見て!星も綺麗ーっ!」
「ほんとだぁあ!」
ようやく辿り着いた、くじ引きで当たった、あたし達が泊まる予定の温泉宿。
…ではない、別の温泉宿。
すっかりさっきの会話なんて忘れていた。
2組なら当然、と美咲さん大樹さん夫婦を誘おうと、2人の部屋に行って内容を話すと、美咲さんをずっと抱き締めてた大樹さんが平然と恐ろしい事を口にした。
「…その2泊3日、3泊4日にしてやろうか?」
「?」
突然の言葉に、美咲さん含めて3人が首を傾げると。
「…もう1件。行く前か後に泊まって、
そこ行けばいいんじゃね。金は俺が出すし」
しばらく沈黙が流れた。
…え、えと。
何だか大樹さん、ものすごく恐ろしい事言ってない…?
「…いやあの、それはどういう…」
蒼汰が恐る恐る聞くと、大樹さんはあっさり答えた。
「お前らが当ててくれたっつー温泉行く前か、
行った後に、もう1つ温泉行くの。
…美咲、温泉入りたいよな?」
「ん!入りたいっ」
「2つ行けるっつったら、嬉しい?」
「そんな事出来るの?嬉しすぎるよー!」
にこにこと微笑む美咲さんを見てものすっっっごく嬉しそうな表情を浮かべる大樹さん。
そこからしばらく、2人の世界で…
…やっぱりただ者じゃないや。
高宮大樹様様だ。
戸惑うあたし達の前でたっぷりいちゃついた2人は、やがてパソコンを開いてあたし達が泊まる予定の温泉宿の近くの温泉を探し始めて。
「…普通の人間じゃねぇわコイツ」
隣で蒼汰が呟いてて、あたしも頷いた。
そしてあっという間に、美咲さんが気に入った温泉宿を決めた大樹さん。
さすがに払って貰うなんてダメでしょ、と思ってお金渡しに行ったんだけど、しっしって払われて結局払えないまま。
その上車まで出してくれて。
…ほんとこの人、何者なんだろう。