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want to be ...【短編集】
第5章 温泉旅行 1日目
その言葉に、更に涙が溢れた。
「…っ、ありがとうございます…。あの、…あの。
蒼汰が来るまで傍にいて貰っていいですか…」
「分かったよ。…え?蒼汰まだ温泉入ってんの?」
「たぶん…。1時間って約束で入ったんですけど
まだ出てきてなくて…。でも先部屋戻ってるかも」
「…あぁ、ならまだ中にいるだろうな。
俺、前にもあいつと温泉行った事あるけど
ほっといたら普通に1時間以上入ってるよ」
「…えっ!?」
「サウナと露天好きみたいでさ、あいつ。
俺とりょう…あぁ、友達とで説得すんの大変だった」
知らない蒼汰の一面を知って驚く。
つまり温泉大好きなのか…
「そうなんですか…知らなかった。
じゃあまだ上がってないかもですね」
「呼んで来ようか?…いや、呼んで来るよ」
「…あ、ありがとうございます。お願いします…」
小さく笑ってあたしの傍を離れ、男湯に入って行った大樹さん。
はぁ、とため息をついて壁に寄りかかり、ドクドクと鼓動する心臓辺りを押さえる。
間違いは絶対に起こさない。
起こさない、けど…やっぱり大樹さんにはどこか惹かれるところがある。
顔はもちろん異常なくらいかっこいいし、無駄に身長高いしイケメンボイスだし独立開業するくらい凄い人だし、他にもいろいろ…そういう建前だけでもものすごく惹かれる人だけど、何だろう。
何が惹かれるのかな?
…美咲さんしか愛さないところ、かな。
あと…あれだ。
女の人では美咲さんにしかまともに接さない人なのに、あたしが蒼汰の彼女だからって理由で歩み寄ろうとしてくれて、話せるようになって…
建前だけじゃなくて、中身も凄くいい人なんだって事分かったからなのかもしれない。
あたしは蒼汰の彼女。
…ううん、妻。
…これ、高校生時代からの恋なんだよ?
頑張って頑張って頑張って、努力し続けた末、あたしは蒼汰の隣にいる事が出来てる。
最近、これがあたしにとってどんなに奇跡のようで、嬉しくて大切な事か…忘れかけてたな。
いつ、
「お前、もう飽きた」
とか言われるか分かんないから…
もう、都合のいい身体だけの女にはなりたくない。
でも、やっぱり思い出すのは、蒼汰のあの言葉。