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逢瀬は月見橋で
第2章 あたしとユタカ

まさか寿退社するとは思わなかった。
このスナックを。
プロポーズから半年後、2人だけの結婚式を挙げ、
店での披露パーティーを最後の仕事にして、
あたしは金物屋の女将になった。
古い商店街の狭い店の奥には義父と義母が住んでるから、
あたし達は近所のアパートを借りた。
ボロだけど、部屋は広かった。
それにいずれはきれいな家に住まわすからっていうユタカの言葉を信じて、
贅沢せずに暮らしてきた。
だけど、今時金物屋で買い物するなんて人、そんなにいない。
もしも都会だったら、まず見向きもされない。
だって、おっきなスーパーやホームセンターなんていうのがあるし、
値段も安いし。
けどここは田舎町だから、
おまけにおっきな店なんて近くにはないから、なんとか商売をやっていられた。
ユタカもさすがに東京でサラリーマンしてただけあって、
いろいろ知恵をだしては売り上げを伸ばそうと頑張っていた。
頼りなさげに見えた夫は、ひたむきに働いた。
それをあたしも側で支えた。
それでもギリギリの儲けしかないから、週に三日ほど、
駅前のスーパーでレジのパートをして家計を助けた。
これでなんとか2人食べていけて、
年金生活の彼の両親に生活費の足しを渡すくらいの事は出来た。

