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逢瀬は月見橋で
第4章 男の正体は・・
男はあたしの髪を何度も何度も撫でた。
心地よくて、うとうとしそうになるくらい
彼の手は優しさにあふれていた。
「気持ち・・よかった?」
男の問いかけに、うふんと笑うだけの答えを返した。
いまさら言葉にしなくったって、この顔見りゃわかるだろって。
「あんたとは体の相性がいいのかもね・・
すごく・・気に入ってんの、あんたのこと・・
あ、そうだ、あんた、名前、なんていうの?」
あんた、あんたと連発したところで気がついた。
この男の名前、まだ聞いてなかった。
「蓮田正次郎・・ちょっと昔っぽい名前でしょ?でも結構気に入ってんだ。で、キミは?」
そうだった。
あたしも名乗ってなかった。
「咲穂・・荒木咲穂。商店街の荒木金物店の女房なの」
「へぇ、金物屋さんか・・そのうち買い物に行ってみようかな。
それよりキミらがここへ来るかもしれないよね」
たしかに、そのうち世話になるだろう。
このへんで病院といったら2つ先の駅に大きな病院があるだけ。
だから風邪くらいなら病院に行かずにじっと寝て治していた。
でもこれからは、この診療所に来ればいい。
町に医者がいるって、それだけで安心できる。