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逢瀬は月見橋で
第4章 男の正体は・・

「ところでさ、あん・・たじゃなくて正次郎さん、
 なんでまたこんな田舎の町医者になったの?」


初めて会った時、都会が嫌になったと言っていた。
生活するには十分な収入があったと想像させるような事も言っていた。
要するに、その生活すべてが嫌になってしまったのだろうか・・


「横浜でもトップクラスのでかい病院に勤めてたんだけど・・
 権力争いとか経営方針だとか、
 そんなつまんないことに一生懸命になってる奴らの下で働くのが嫌になってね。
 それに・・女房も病気で死んじゃったし・・」


「えっ?あんた、結婚してたの?」


また名前を呼ばずにあんたと言ってしまったが、
そんな事考える隙もないくらい驚いた。

正次郎は天井を見つめたまま、
うん、とつぶやいた。



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